Vol.4 ルタイティップさん(タイ王国)

出身地の首都バンコクから東京へ移り住んで約20年。

鮮やかな青い絹の上着に、金銀色の細かい模様が入ったスカート姿をはじめとした民族衣装は、在日大使館の行事や大田区の文化イベントでも披露して、日本とタイの交流を深めてきました。

子育てと日本語の通訳や専門学校講師を勤めるかたわら、池上・本門寺の周辺でくつろぐ時間を大切にしています。

 

日本語は大学から

タイの大学で日本語を専攻し、交換留学生として日本の大学で1年間学び、タイへ戻った後、再び来日して日本の大学院を修了しました。
「大学1年生の時、バンコクで映画「となりのトトロ」(宮崎駿監督)を見ました。日本のマンガやアニメは、タイでとても人気があります。
留学前は日本語には結構自信がありました。でも、日本に来た時に電車の車内放送がよくわからなくてショックを受け、留学中はしっかり勉強しました。」と振り返ります。

民族衣装を着て文化交流

「交流会やパーティーなどに民族衣装を着ていくと、相手との距離が縮まり、文化交流にとても役立つ体験を重ねてきました。高校生の時に、イギリスやニュージーランドへ行った時も、民族衣装を着てタイ文化を紹介しました。今日の服は元来、政府や王宮の行事で着る衣装です。結婚式では、金色、黄色、ピンク色で光沢のある衣装を着ます。」

「昨年(2019年)の夏、洗足区民センターでタイと台湾の文化を紹介するイベントにも着て行き、周辺の中学生が大勢来て、タイに興味を持ってくれました。」

お茶で比べる日本とタイ

国際都市おおた協会(GOCA)が主催したイベントでは、「国際都市おおた大使」として協力、民族衣装を着てタイのお茶を出し、パンフレットを用意してタイへ旅行したい人たちの質問に答えました。

「タイのお茶は甘いのが特徴です。(熱帯性気候の)暑い国なので適度な刺激が必要で、タイ人は果物系の甘いお茶が好きです。」

「日本は、畳に正座して抹茶を飲みますね。正座は足がしびれます。お茶とお菓子は、しぶい味と甘い味の組み合わせで面白いと思います。使った茶碗は『数百年前に造られた』と紹介され、すごいと感じました。」と、同じお茶でタイと日本を比較してくれました。

仏教国のお坊さん

両手を胸の前で合掌し、タイ語で「サワッディーカー(こんにちは)」と言って頭を下げるあいさつは、仏教に通じた日常の生活習慣。タイで、お坊さんは尊敬の的です。

「国民の95%が仏教を信仰しています。お坊さんは勉強熱心で、博士になるまで学ぶ人もいて、昔は先生として子供たちを教えていました。結婚できないなど、修行のルールは厳しく、国民から尊敬されています。

タイの公共交通機関には、日本の『お年寄り優先席』のような『お坊さん優先席』があります。お坊さんは、女性と接触すると厳しく処分されるので、それを防ぐためです。」

 

 

通訳の一日

これまでは東京ビッグサイトや幕張メッセなどさまざまなイベント会場で、タイ企業と日本人顧客の通訳をしてきました。

「幕張メッセで開かれた、国際食品・飲料展では、タイから多数の企業が出展し、その中でお茶やココナッツミルクなどの食材を扱う店先で通訳しました。朝から晩まで断続的に続く商談で通訳する場合もあります。今はコロナ禍で、対面中心の仕事は減ってしまいました。」

本門寺周辺でリラックス

本門寺周辺が、お気に入りのヒーリングスポット(癒し空間)です。

「広々としていて静かで、仕事や日常の忙しさから逃れて、ゆったりと流れる時間を味わえる大切な空間です。春はサクラ、夏はアジサイ、秋はモミジなどの紅葉(こうよう)という具合に、四季折々を楽しみ、くつろげます。タイ人の友達が来るたびに本門寺へ連れて行くと、仏教のお寺なので落ち着くと好評です。また、近くにある古民家カフェにハマっています。バンコクで幼い頃、木造2階建の住宅に暮らしていた当時を思い出して、心がなごみます。」

コロナ禍の過ごし方

国際都市おおた協会主催の「タイ王国 文化講座&料理教室」(2020年3月1日予定)で講師を務めるはずでしたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い中止されました。

「申し込みが多かっただけに、とても残念でした。手作りのグリーンカレーと、タイ米で作るお菓子を通じて、レストランとは違う家庭の味を伝えたかったです。」

「今は無料アプリのLINE(ライン)を使って、バンコクの両親と毎日のように話ができるので、ある面では安心。便利な世の中になりました。2020年9月時点でタイの新型コロナウイルスの感染者数は、まだ日本の20分の1以下で少ないですが、今後に備え両親と情報交換しています。」

***************************************ミニ知識:政府観光局資料によると、日本を訪れた外国人旅行客3188万人(2019年)のうち、タイからは132万人で、中国、韓国、台湾、香港に次いで「5番目」に多い。逆に、出国した日本人は2008万人(2019年)で、タイへ165万人が訪れ、米国、韓国、中国、台湾に次いで「5番目」に多い訪問先になっています。外国人旅行者の受入数(2018年)は、日本の3119万人に対して、タイは700万人ほど多い3818万人の観光大国です。
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文責:「隣の外国人」実行委員 高野

 

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